捨てる神あれば

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 ぼくは、薄暗い電車のガード下に、うずくまるように座り込んでいた。  どうして自分がここにいるのかは、かろうじて理解ができている。  けれど、どこかその記憶の映像も、声もおぼろげだった。    人間という生き物は、なにかとてつもなくショッキングな出来事に遭遇したとき、自分を護るために記憶を寸断させたりすることがあるらしい。  ぼくの身にも、それと同じようなことが起きたのだろうけど、今回は完全にその出来事を記憶から消すことができなかったのだろう。  どちらがしあわせだったのかは、今もよくわからないままだ。
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