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たどり着いた潜伏先の空き家は、古く朽ちかけているが正面から中は見えない。俺が中を覗くと、暗い室内は誰もいないかのようにシンと静まり返っていた。
「シア、いるか?」
「とら!」
息を殺していたんだろう、俺が声をかけると奥からシアが飛び出してきた。なんだ……元気そうだな。
「大丈夫か? 怪我とかしなかった?」
「お前……俺の心配をしてるのか?」
「はぁっ? 変な勘違いするなよ。こんなところで死んでもらっちゃ困るしな。おれはもっと自由を堪能したいの!」
「いや、こんなことで死なねぇけど……」
口は悪いものの、真剣に心配されているのが伝わってきて調子が狂う。それに、そうか……シアにとってはこれでも自由か。
召喚される前がどうだったのかは知らないが、勝手にこの世界へ連れてこられたシアがずっと行動を制限されているのは事実だ。
この束の間の旅がシアにとって泡沫の夢だと言うならば、俺は何としても安全にこいつを送り届けたい。そう思い始めていた。
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