4.

1/5
前へ
/136ページ
次へ

4.

 追手は始末したが、俺たちがあの街にいたことは間も無く知られてしまうだろう。  しばらく人の多い街は危険だと判断し、遠回りして山里を抜けることにした。山道は最低限の整備しかされていないが、全くの道なき道を進むよりはいい。 「とら! あれ、あそこにいるのなに!」 「タヌキだな」 「ふわふわじゃん。かわいい……」 「あれを夕飯にするか?」 「は!? だめだめだめ! 絶対捕るなよ?」 「なんでだ。鍋にすると美味いぞ?」  山で野宿をすることを伝えたとき、シアは意外にも「キャンプだ!」と不思議な単語を発して楽しそうにしていた。携帯食は用意しているが、食材を現地調達できるのに越したことはない。  ちょうど食材が通りかかったから捕まえようとしたのだが、シアは強い拒否を示した。そういえば肉は駄目だっていってたか…… 「う、想像しただけで気分が……」 「嘘だろ? お前、好き嫌いしてると早死にするぞ」 「そんくらいで死ねるかよ……」  大袈裟に言ったけど、人は簡単に死ぬんだよなぁ。しかしシアの顔色が本当に悪くなっていることに気づいて、足を止めた。あーやっちまった……俺も強く反論しすぎたかもしれない。  血の気のない顔をしたシアをちょうどいい倒木に座らせ、西日が強くなってきたので早めに野営の準備をすることにした。    少し周囲を探せば小さな洞窟があり、古い焚き火の跡もあった。風も通っているし、ここなら煮炊きをしても大丈夫そうだと判断する。シアを呼び洞窟で休ませて煮炊きの準備に取り掛かろうとすると、背中に声がかかった。 「とら、おれも行くよ。水汲んだり、薪を集めたりするんだろ?」 「まだ顔色が悪い。本調子じゃないなら休んでろ」 「これくらい大丈夫だって。それに……動いてたほうが気分も良くなりそうだから」 「……倒れたら知らねぇぞ。まぁいい。水場で煮炊き用の水を汲んできてくれ」  川沿いを歩いてきたから、水場はそう遠くない。人けもないし、二人で動いたほうが早く準備できていいだろう。  薪集めはコツがあるから自分が向かうことにして、シアには水汲みを任せた。
/136ページ

最初のコメントを投稿しよう!

51人が本棚に入れています
本棚に追加