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薪を集めていると、周囲にポツポツと若い薬草が生えている。若菜なら癖もなく、料理にも使われるものだ。今日は薬草入りの粥にするか……別にシアが心配なわけじゃないが、倒れてもらったら俺のほうが困るのだ。
俺はつい薬草採りに夢中になって、気づけば周囲が薄暗くなりかけていた。片手が薬草でいっぱいになってしまっている。
洞窟へ戻ると誰もいない。シアはまだ水場か? 近いし、水汲みだけならそう時間はかからないはずだが……わりかし大きな川だった。まさか流されるなんてこと……?
慌てて川の方へ向かうと、パシャ、と水音が聞こえた。そのとき、木々の間から見えた光景に俺は目を奪われてしまった。
シアは水浴びをしていた。白い内衣一枚で。
気持ちよさそうに川で身を洗っているが、薄布は当然のごとく濡れて肌に貼りつき、下の肌が透けている。
着ていた衣や帯は無造作に低い木の枝に掛けられ、靴は川辺に脱ぎ捨てられていた。こいつ行動に品とか全くないよな……今さらか。
普段着ている重ねた衣では見えない腕や脚の細さ、胸元の飾りの色までもが見えそうな状況に、つい目を凝らしそうになってハッとした。思わず背を向ける。
(な、なにをしているんだ俺は。女ならまだしも……)
俺が自分の行動に愕然としていると、シアが気づいてしまった。
「あ! とら〜! 気持ちいいから一緒に水浴びしようぜ。ちょっと水が冷たすぎるけど」
「ふ、ふざけんな! さっさと戻れ。お前……唇が紫になってるぞ。火焚きしておいたから、湯を沸かしておいてくれ。ついでに身体も乾かせ」
「え〜。じゃあ交代か。ね、身体拭いてよ」
「ガキじゃねぇんだから自分でしろ!」
俺は服と一緒に掛けてあった手ぬぐいをシアに投げ、洞窟へ戻るようしつこく追い立てた。
すれ違うように自分も衣を脱ぎ捨て川に入る。意外に深さがある。キンと冷えた水が熱く火照った身体を冷やしていくのを感じ、はぁ、と重い息を吐いた。
周囲にひとの気配がなくなったことを改めて確認し、俺は腰まで水に浸かって下肢へと手を伸ばした。
断じて……断じて! あいつに欲情なんてしていない。抜くのも忘れて溜まってたから、シアの身体を見て反応してしまったって仕方ないはずだ。
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