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 健康なのはいいことだ。だがなんというか……シアは不安定だ。普段はカラッと元気で煩いくらいなのに、ふとしたきっかけで顔を青くしたり震えたりする。  一晩経てば何事もなかったように元気を取り戻すとはいえ、こうも頻繁だとよほどの事があったんじゃないかと勘繰りたくなる。どこかで仲間の情報屋と連絡を取りたい。  俺はもう、シアを見捨てられない気持ちにかなり傾いていた。シアは口こそ悪いが、普通の青年なのだ。王城や後宮などという場所で自由を搾取されて生きるよりも、市井で自由に、平穏に生きるほうが幸せだろう。  この依頼を差し向けた仲間だって、稀人に会わせることが目的であって依頼の遂行如何については何も言うまい。  でも……稀人の役割を求める人々から逃してシアを救うにしても、そこに俺が積極的に関わっていいのか? もうすぐいなくなる俺が?  中途半端になるくらいなら、俺が仲間に依頼を出してシアの未来を一任したほうがいいかもしれない。あとは生きている限り、影で邪魔者を排除する役割を担ったっていいはずだ。  悶々と考えながらも白湯ができたので寝室へ戻ると、シアが目覚めていた。 「ここ……どこ?」 「偶然見つけた山小屋だ」 「小屋……ってベッドとかあるもんかな……」  もにょもにょと喋っているシアの背中に腕を回し抱き起こす。この建物の違和感については、深入りされても返答に困るから無視した。  薬を渡すと子供みたいに眉根を寄せながらも口に含む。すぐに飲み込めるよう俺は手に持っていた椀を口元に近づけたが、なぜかシアは自分で椀を持たずに口をつけてこくこくと飲み始めた。  自分で持てるだろと思いながらも仕方なくそのまま飲ませてやっていると、心のなかにぽっと火が点ったような、むず痒いような、不思議な心地になってくる。  なんだろうな。ひとりで生き、ひとりで死んでいくことに不満なんてなかったが……犬猫を飼うのもこんな感じなんだろうか。  白湯を飲みきったシアは、身体の中から温まっていくことにほっとしたように、身体の強ばりを緩めた。今は寒気を感じているようだが、そのうち発熱して汗をかくだろう。 「街中だったら果物でも搾ってやれたが……」 「ふふっ、とらってお母さんみたい」 「なっ……!?」
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