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 ……いやいやいや。いくら見た目だけ極上な男が艶っぽく見えたからって、惑わされるな、俺! 「とら……ありがと」  ささやくような声で告げられたひと言にハッとする。もうシアは満足げな顔で目を閉じていた。 「ほんと、調子狂うな……」  やけに素直な態度に、嫌な気はしなかった。こいつがいま頼れるのは俺だけだという事実は、心の奥底で眠っていた望みを疼かせる。  肩書きとか関係なく、ただひとりの人間として俺を見てくれる人が欲しいって、青臭く思ってたときもあったっけなぁ……  その夜は結局つきっきりで看病し、翌朝元気になったシアといつもの口喧嘩を交わしてほっとした。こんなことに安心するだなんて、俺も相当こいつに侵されている。  念のためその日も休ませ、二日経ってから俺たちは移動を再開したのだった。
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