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2.
そもそも取ろうと思って取った休暇なんて初めてで、暇を持て余していたのだ。
十八の歳に呪いをこの身に受け、家を出奔し国も出てからもう十二年経つ。剣の腕で傭兵として身を立てながら人脈を作り、情報を集め、解呪の方法を探り続けてきた。
解呪については一向に進展しなかったものの、気の合う傭兵仲間と情報屋でフリーの隠密集団を結成し、こちらから仕事を選べるようになるくらいには名を馳せた。
いくら仕事が順調でも、俺はもうすぐ死ぬ。それは身体に根付く呪いが徐々に俺を蝕んできていたからで、三十歳になってついに死期を悟ったのだ。
仲間とこなす仕事はやりがいがあって楽しくて、やめたいと思ったことはない。だがこのまま、死ぬまで同じことの繰り返しで終わるのは……味気ないような気がした。
できるものならば呪いを解いて生き続けたい、という思いはもちろんある。
しかしながら大陸にいる呪術師は絶対数が少なく、その情報も秘匿されている。王朝お抱えの呪術師となれば宮城内に住み一切表へ出てこないことも普通で、相手の見当もついていない俺が十二年間探した結果は惨敗だった。
いま思えば、最初から情報屋の仲間に協力してもらえば良かったな。ただ、各国の情報にも精通している仲間に俺の正体が悟られるようなことは避けたかったのだ。
呪いが分かりやすく身体に不調をもたらし始めたここ数年になって、言えばよかったと後悔したが……今さらか、と諦めが先行した。
仲間に休むと宣言して仕事の受注を止めて、無駄に貯まっていた金で酒を飲み明かしてみたり娼館に入り浸ってみたり。
結局そんな娯楽は仕事の合間にもできることだし、すぐ手持ち無沙汰になってしまった。
一生懸命生きてきたとは思うものの、腕に多少自信があるだけで大した趣味もない。三十年も生きてきて、なんてつまらない人間になってしまったんだと我ながら呆れた。
「まじつまんねー。もっとおれを喜ばす娯楽を用意しろ! 芸とかないのかよ、ご主人サマ?」
「はぁ……」
「おい、この美貌を前にしてため息つくなんて百年はえーっつの」
……こいつに言われるとなんか、悩んでいたこととか全部どーでもよくなってくるな。悪い意味で。
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