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でかい地球儀やら壁掛けの地図が置かれた社会科資料室は、放課後になると『音楽研究会』の部室になる。
音研の主な活動内容は、その名の通り音楽の研究なので、音楽流して「これいいな」「な」で終了。
部員は、浜高一・二年イケメン軍団。……呼び方くっそダサい。
適度な広さと日当たりの良さで、先輩たちがこの資料室を溜まり場にしていたことが先生にバレて、ここを使う正当な理由が欲しいために同好会を作ったらしい。
「この前のダンチャレ動画、やっぱすげー伸びてるらしいよ」
「へー。まぁ楓出てるしな」
「お前は楓教の信者か何かなの?」
「先輩か様を付けろよ。お前に呼び捨ては許されてない」
「ガチ信者やんけ」
放課後、テックハウスミュージックが流れる部室にいるのは俺と武瑠だけだ。
誰かが持ち込んだ古いソファにだらりと座って、武瑠はゲーム、俺はスマホをいじって時間を潰している。
「つか斗真、その傷どしたん?」
武瑠がスイッチから顔を上げ、俺の頰あたりを顎で示す。
武瑠の言う「それ」は、多分目の下くらいにある引っ掻き傷のことだろう。
「……ジェルネイル。あれもはや凶器だろ」
「……女の子に凶器使わせるようなことしたお前が悪いんじゃね?」
「ごもっとも」
正論が耳に痛い。
昨日は、楓が両親と食事するからって遊べなくて、俺もバイトないし、ってところに女の子から声かけられて。
その子の家に誘われて、そしたらやることはヤることしかない。
俺がセックスする理由は、溜まってたから、暇だったから、誘われたから。
昨日は、溜まってたし誘われたから。
動いて出しておしまい。
心が満たされることはないけど、それでも性欲は発散できる。
今まで、特定の彼女は作ったことはない。全部セフレだ。
本当に好きな奴以外とはエッチしない、とかいう聖人君子でもないし、かといって、好きでもない奴を彼女にする意味も分かんないし。
「なんで凶器使われたんだよ」
武瑠がゲームを再開させながら言う。
「別に……ただ、TVでケーキがうまいっていうカフェ紹介してて、その店の名前スマホにメモしてたら」
「何やってる時?」
「……ヤってる時」
「アウト」
まぁね。確かに、真っ最中にTV見ながらスマホいじるのはマナー違反だ。そりゃビンタくらいされる。俺が悪い。けど、楓が好きそうなケーキだったからさぁ。
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