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「本当、イケメンの無駄遣いだよおめーは」 「俺のイケメンを俺がどう使おうと関係ないと思いますけど」 「うざ。そのカフェ、女の子と行ってやれよ。一緒に行きたくて店の名前メモった、とか言って」  さすが軍団で一、二を争うモテ男のアドバイス。  武瑠も、結構去るもの追わずタイプだけど、別れる時揉めたとか聞いたことないし、なんなら別れた後、元カノと友だちになるような奴だ。 「あー……それもう遅い。その子に、このカフェ一緒に行こうって言われて、楓と行くって言っちゃった」 「アウトすぎだろ信者」  ゲラゲラ笑いだす武瑠に蹴りを入れていると、部室の扉が開いた。 「斗真、お待たせ」  顔を覗かせたのは、新しいバレンシアガのカーディガンを着た楓だ。最高に似合ってる。 「おー。掃除当番終わった?」 「うん。……てかなんで武ちゃん爆笑してんの?」 「いやー、マジで斗真が信者過ぎるというか、好きな人のことが好き過ぎるというかぁ」 「っおい、武瑠!」  余計なことを言い出す武瑠の口を慌てて塞ぐ。  武瑠に、恋愛感情として楓のことが好きだと言ったことはないけれど、こいつは多分、気づいていると思う。俺が不毛な片思いをしていることに。 「……斗真の、好きな人?」 「楓、気にすんな。こいつが適当言ってるだけだから」  武瑠を睨んで、ぺたんこの通学バッグを手に取る。 「帰ろ、楓」 「ああ、……うん。武ちゃん、またね」 「バイバイ楓先輩。斗真は崇拝もほどほどに」 「うるっせぇ」  楓に見えないように舌を出す武瑠に、俺も楓に見えないように中指を立てた。    「アウター買った、よ、と……」  楓が呟きながら、この前買ったダウンの画像をSNSに投稿する。 「読モ用のアカウント?」 「そう。週に一回か二回のポストノルマが、地味にめんどい」  一仕事終えたみたいに、楓は息を吐いてソファに背を預けた。  友達と撮る動画とかには結構参加してるけど、週二のポストがめんどいと思うくらいには、楓自身はSNSにそこまで積極的じゃない。 「楓の個人アカの方、全然更新されないじゃん」 「俺あんまSNS系得意じゃねぇもん。斗真だって完璧見る専だろ」 「俺もあんまSNS系得意じゃねぇもん」 「似てないーだめー」  楓の声真似して答えたら、隣に座る男は楽しそうに笑う。だめー、だって。かわい。
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