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初めてセックスをしたのは、十三歳の時だった。
相手は母親の同僚。
「マリカーやろー」くらいの軽いノリで始まって、ゴムを着けるのに手こずってたら、「モタモタしてんなよ」とキレられた。
青春ドラマによくあるような、初体験の甘酸っぱさなんて皆無だ。
ただ動いて、出して、終わり。
「こんなもん？」と聞いたら、「こんなもんだよ」と風俗嬢のおねえさんは笑った。
あれから三年。
俺にとってセックスは、ただ動いて出して終わる、こんなもんのままだ。
「お、斗真。下に楓先輩いるよ」
昼休み。
友達の「楓」という言葉に反応して、パックジュースを咥えながらベランダの下へ視線をやると、中庭にはいつの間にか人だかりが出来ていた。
一学年上の男数人が、女の子たちに囲まれている。
「先輩達なにやってんだろ」
「なんか動画撮ってね？」
「あ、あれだ。今流行ってるダンスチャレンジ」
「あーそれだ。俺らも撮る？」
「じゃあ先輩らと一緒にやろうよ。浜高の一、二年イケメン軍団コラボ、めっちゃ再生数伸びるじゃん」
「軍団名くそダサ」
騒がしい友人達の会話は頭に入ってこない。
意識は全部、中庭にいる一人の男に集中してしまう。
中庭にいる中で、いや、世界中で一番カッコよくて、綺麗で、可愛い人、西園 楓をひたすら目で追う。
「……楓マジで綺麗すぎる」
「斗真さぁ、脳直で喋んのやめろ」
友人の武瑠が呆れ顔で言うけど、それも無視。
――相変わらず綺麗だけど、なんかあいつ薄着じゃね？
楓はカーディガンもブレザーも着ていない。外だし、この時期白シャツだけじゃ寒いだろ。風邪ひいたらどうすんだ。
「ちょっと中庭行ってくるわ」
「おー。斗真、コラボのこと先輩に話してくれんの？」
「あ？コラボってなに？楓寒そうだからパーカー貸してくる」
「なにこいつ。なんも話聞いてねんだけど」
「病気だから。楓病」
「おい、楓とか言ってんな。呼び捨てだめ。俺は幼馴染みだから特別」
「うるさ。早く行かないと昼休み終わるよ」
「おー」
空になったオレンジジュースをゴミ箱に捨てて、二段飛ばしで階段を降りた。
「楓」
中庭まで出て声をかけると、上級生達とギャラリーの視線が集まる。
楓が俺に気づいて、「斗真」と笑う。
それだけで心臓が痛い。
あー。好き。マジで好き。
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