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俺たちは近くのコーヒーチェーン店に入った。
注文し、空いているテーブルに座る。由美のダンナは少し離れたテーブルに座った。
自分がいると話し難いだろうと配慮してくれたのだ。
改めて由美と向き合う。
目元や口元は、別れてからの歳月を感じさせるが、明るい雰囲気は付き合っていた当時のまま。
「年取ったけど、変わらないな」
「何それ? 女の人に向かって年取ったとか失礼じゃない?」
由美はそう言いながら、ケラケラと笑った。
昔も俺が話すと、こうやってよく笑っていたな。由美の姿が、付き合っていた当時と重なる。あぁ、本当に変わらないな。
「神崎くんは、今、何してるの?」
「俺は普通の会社員だよ」
「由美は?」
「私も会社員だよ。」
聞くと大学を卒業したあと、希望していた会社で製品開発の仕事に就いたらしい。ダンナとはそこで知り合ったそうだ。
あぁ、俺も大学を辞めなければ、由美と同じように企業で製品開発の仕事ができたのだろうか……。
考えても無駄なことだと、軽く頭を振った。そんな俺の様子を不思議そうに由美が見つめている。
沈黙した俺に、由美が頼りない小さな声で話しかけてきた。
「あのさ……、ずっと仲直りしたかったんだ。仲直り、できるかな?」
「あぁ。あれは俺が悪かったよ。由美は悪くなかった。そうじゃなかったら、今、こうやって話してないよ」
俺は由美の目を見て、力なく笑った。
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