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それからしばらくは、手紙のやり取りをしたりしていた。
だけど、だんだんとお互いがいない事に慣れていって、一方で新しい環境や新しい友達との生活で忙しくなっていって。
中学に上がって気がついたら、康介との手紙は途絶えてしまった。
それでも、いつか会えるという思いは消えていなくて。部活の大会などは出来る限り情報収集していた。
だけどどこにも『豊田康介』の名前はなかった。
まぁ、俺もせいぜい県ベスト四止まりだし、康介だってよほど強くなければ情報がないのも当たり前か。
そもそも今、何県に住んでいるのかさえしらない。
県ベスト四まで残った時、久しぶりに康介に手紙を書いた。中学生になってスマホも持たせてもらえたから、SNSのアドレスも教えた。
だけどその手紙の返事はなく、その後に出した手紙はあて所不明で返ってきてしまった。つまりもうそこには住んでいないのだと、母さんが教えてくれた。
引っ越したこと、康介は俺に知らせてこなかった。
そのことがショックで、俺はそれ以来、康介に手紙は書いていない。当然、康介からも来ない。
どこかに情報はないかと、ネットで検索しても出てこなかった。
どこでどうしているのか。そう思いながらも引越した事を教えてくれなかった薄情者、と恨む気持ちを抱えた俺は、康介の事を頭の片隅で蓋をして高校生になった。
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