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「まさか、ここで幸弥に会えるなんて思わなかったよ」
目の前の奴がそんな事を口にするけれど、俺はまだ受け入れられてなかった
。
こいつが、康介?
あの泣き虫で、ちっさかった康介?
「幸弥?」
屈むようにして覗き込んでくるそいつから、俺は思わず距離をとった。
親し気に話しかけてくるけれど、俺の中では色んな気持ちが整理ついていなかった。
「本当に、康介、なのか?」
「うん。そうだよ」
面影なんて一つもない。馬鹿みたいに背が伸びて、声だって低くなって。
泣いて別れたあの日の康介はどこにも見当たらない。
それくらいの月日が、俺たちの間に経っていたんだ。
「なん、だよ。遠くに行ったんじゃなかったのかよ」
ようやく絞り出せた言葉が、それだった。
もう会えないと思った。
でもいつか会えるとも思っていた。
そう、約束したから。だけど……。
「なんで、連絡、くれなかったんだよっ」
俺よりはるかに背の高いそいつの胸倉を、精一杯掴んだ。
「どこ行ってたんだよ! なにしてたんだよ! 引っ越しの連絡忘れるくらい、俺の事はどうだってよかったのか!? そのくせなんで今笑って久しぶりって言えんだよっ」
あて所不明になってしまえば、こちらからは調べようがない。康介が連絡くれない限り、俺は康介の居場所を知ることが出来なかったんだ。
そして、連絡してこない康介にとって俺は「その程度」と切り捨てられた気がしたんだ。だから気にしないように蓋をしていた。それなのに。
「……ごめん」
俺の腕を振り払うでもなく、小さな声で奴が呟いた。
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