(三)

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 船長は一瞬何が起きたかわからないようだったが、自分の体を掴んでいるテロリスト腕が倒れながら自分を道連れにしようとしているのを見て初めて事態を飲み込み、タガログ語で何か叫び声を上げながら絡みついてくるテロリスト腕をふりほどいて脇にどいた。そのとき、体のバランスを崩してその場に尻餅をついて倒れ込んだ。  すでにエレーナが部屋に入ってきていて船員と何かを話し、「こちらは怪我などなし。無事です」と報告した。  その間、ヨギョンは銃口を向けたまま仰向けに倒れたテロリストに近づいた。小銃をセミオートで、しかもヨギョンとエレーナの二人で撃ったため、額だけでなく、顔にも弾丸の侵入創が複数できていて、元の顔はもはやわからないほどになっていた。 (続く)
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