そのま白き体、月明かりに染まりて

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「おめでとうございます。2ヶ月、恐らくお嬢ちゃんですよ」 素敵なナイスミディのおばさん先生が満面の笑みをこぼしてくれていた。不幸の連鎖ってこういうこと言うんだろうか。 そんな言葉を心の中で呟き、ここ二三日夕立ちを繰り返している夕闇の町並みをぼんやりと虚ろに眺めながらいつもの道を行く。 私の気分とは裏腹に愛車のマジェスティは小気味良いエンジン音を辺りに響かせ濡れた路面を水しぶきをあげながら滑るように走っていく。 (俺はもう乗らないからみやびが乗ってていいよ) 別れ際に彼がラインに残した言葉はそれだけだった。 「お前もまさか手切れ金がわりに使われるなんて思っても見なかったろうね」 ウォンウォンとまるでその呟きに応えるようなエンジンの鼓動をスロットルを握る右手で感じながら左手でタンクをポンポンと叩く。ブラックメタリックにコーティングされたそのタンクに浮き出るように描かれた金色の般若の面がニッとコチラを向いて笑っていた。 (でもそんなことより母にはどんな顔で会えばいんだろ) 電話の向こうでは愚痴や嘆き節ばかりをダラダラと垂れて何を言ってるのか要領を得ない母に堪らず電話を切った。 お父さんにどう説明するの? 何をやってたの今まで 生むの産まないの? 相手はどこの誰? 久しぶりの言葉もなく畳み掛けてくるそんな母の言葉に 取り敢えず今夜行くからとだけ答えた。 およそ三年ぶりになる、家を出ててから。
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