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「お、起きたか」
わたしが部屋から出ようとすると、足音に気づいたクラウドが、どこからか声をかけてきた。扉を半開きのまま、きょろきょろとあたりを見渡してみると、部屋の前にある水晶でできた階段の最上段に、クラウドは立っていた。
ぼうっとしていて気づくのが遅れたが、ここは、クラウドの家だ。おしゃれに整頓された室内は、身なりに気を使うクラウドらしい部屋だ。自分のベッドをわたしに貸していてくれたらしい。
それにしても、小さな頃に来たときと違って、随分、全てのものが小さくなったようにみえる。高い高いと思っていた天井も、今では、手を伸ばせば触れられそうだ。
「聖が起きたらすぐに出迎えられるよう、親御さんにも来てもらった。みんな帰ってきた聖を待ってるぜ」
階段を一段一段降りてきて、わたしのほうに近づきながらクラウドはにこやかに言った。
親が近くにいる。長年連絡をとっていなかった親が近くにいると思うと、わたしの背筋が伸びた。
七七年経って、両親はどう変わっただろう。神候補生のこの世界では、人間界より、何十倍もゆっくり年が流れていく。果たして今の自分が受け入れてもらえるのか。
父も昔、帰ってくる時、成長していたわたしを前に、こんな気持ちだったのだろうか。まして、わたしが物心つく前から父は人間ゲームに行っていたので、記憶のない娘を前に、不安しかなかっただろう。
クラウドに導かれて、みんなのいる部屋にむかう。その部屋の扉を前にすると、クラウドは、わたしに先頭を譲った。
強めに握った拳で、二回ノックする。扉越しに騒がしかった向こう側が、息を呑むように、急に静かになる。
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