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「悪かったな」
翌日クラウドにいつものように会うと、クラウドは開口一番そう言った。なんのことかよくわからないわたしは、口をぽかんと開けて間抜け面をしていたことだろう。
すると、クラウドは自分のポケットを探って、一枚の折り紙を取り出した。色こそ赤ではなく黄色だが、チューリップだ。少し折り目がずれている。クラウドが折ったのだろうか。
「シジマじいさんがさ、紛失物探知機っていう怪しげなものを作ったんだよ。それがまたポンコツで、ゴミ箱にまで反応するんだよね。ゴミは紛失物じゃないだろ」
クラウドがなにを言いたいのか、わたしは首を捻った。
わかってないわたしをみて、クラウドは、後頭部の髪をかきむしって言った。
「おまえが男だろうが女だろうが、どっちでも、聖は聖だろ」
クラウドの頬に朱がさしているのを見てわかった。さっきからよくわからないシジマじいさんの発明失敗話をしていたのは、照れ隠しの言い訳だ。
シジマじいさんがたまたま見つけたわたしのチューリップ。それをみて、クラウドは何か思うところがあったのかもしれない。
わたしの趣味にも合わせて不格好なチューリップを折ってくれたくせに、照れて素直に謝れないのは、クラウドのかわいいところだと、わたしには思えた。
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