人間ゲーム

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 わたしが目覚めると、そこはシジマじいさんのゲームストアとは違う場所に変わっていた。ゆったり眠れる、大きな羽毛布団にくるまっているようだ。  頭が随分軽くなっている。めまいもない。誰かがわたしを運んでくれたのか。クラウドかな。  ベッドから体を起こしてみると、すんなり座れて、体もかなり軽くなっていた。人間のゲームをしていた時から、病に長く伏せっていたので、こんなに自分の身体がスムーズに動く感覚は何年ぶりだろうというくらい懐かしい。  ベッドを降りると、タンスとの間の壁に、クリスタルフレームの姿見がかけられている。そこに映る自分をみて、わたしは、やはりと納得した。  随分身体が軽いと思っていた。ゲーム世界では老化して死んだはずの身体は、神養成世界では、昔、翼に入る前の若さとほぼ変わっていない。  寝ぼけが少しずつ覚めてきて、眠っている間にみた、幼き頃のチューリップの夢が思い出されてきた。翼の中で強制的にみているような、人間ゲームのリアルな夢とは違い、もっと淡い、懐かしい記憶を辿る夢だったように思う。  あの幼い時から、少しずつ、わたしは人と違うような気がしていった。自分が男か女か、わからなくなることが多かった。  身体は男性。  趣味は女性。  それがわたし。  まだ恋愛経験が少なく、恋愛対象ははっきりしないため、男か女かは明確には言えない。  前の人間ゲームでは、男性として生きて、女性と結婚して、男性として生涯を終えた。家族もいたって平凡な、それなりに幸せな家庭だった。しかし、何かもの足りない。  次の人間ゲームでは、女性として生きてみよう。両性ともの人生を体験することで、なにかわかるかもしれない。
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