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薄れゆく意識の中で、わたしの頭には、聴いたことがないはずの音楽が軽快に流れていた。しかし、どこか懐かしい。遠く昔、何百年前の記憶のように思える。
シリアスな別れにも、脳内にこのような明るい音楽が流れると、心が擽ったいような感覚を覚えた。身体が元気なら笑ってしまっていたかもしれない。
だんだん、意識は遠のいていく。しかし、どこから聴こえているのか、その音楽は大きくなっていく。耳はもう病気で機能しないはずだし、脳も死にゆくはずだ。
意識が消えるときというのは、眼前が黒くなっていくのか、白くなっていくのか、疑問に思ったことがある。その答えは後者だと、わたしはその時に知った。
最初、病室で瞼を閉じた時は暗かった目が、今も目を閉じているはずなのに、だんだん白くなっていき、今や眩しいほどになっている。目の前で白色ライトを最大にして照らしているような眩しさだ。見えるのは白さのみ。目を閉じて避ける術もなく、ただ、その光の強さと軽快な音楽ばかり大きくなっていく。
もう耐えられない。苦痛だ。苦しくてたまらない。
そう思ったとたん、急に、全てが楽になった。
「CLEAR THE GAME」
意識がはっきりし、眼前にそう表示された。
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