人間ゲーム

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「今までありがとう。さようなら」  そう言葉にしようとしたが、形にならないまま、わたしは酸素マスクをつけたまま息をひきとった。最期に涙を流す家族が薄ぼんやりと、涙で滲んでみえた。この涙は、惜別の思いがあふれ出るひと滴なのか、それとも、ただ重い病状でだるくて痛い限界を迎えた身体が流す最後の一滴なのか、わたし自身もわからなかった。  いい家族だった。  特別仲がいいわけでも、特別な功績をあげたわけでも、特別性格が悪いわけでもない。喧嘩することも、共に食卓を取り囲んで笑うこともあった。居心地は悪くなかった。  ただ、生きている。それだけを毎日続けた、ごく普通の家族だった。
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