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急に気温が下がると、温かいものが欲しくなる。
マシュマロが溶け込んだ熱々のココア、コンビニのおでん、レジ脇の肉まん、スーパーの入り口に置かれた焼き芋、そして……。
「寒っ」
顔にあたる空気が冷たくて、いつもより早く目が覚めた。
吐く息は白く、発熱素材の毛布にくるまってはいるものの、冷たい空気が床から上がってくるのが頬でわかる。
床暖房があればいいのだが、生憎ここにはそんな素敵なものは備わっていない。
昨夜見た天気予報では、昨日の最低気温よりも、今日の最高気温のほうが低くなると言っていた。
手足の指先が冷えやすい僕にとっては、つらい季節の始まりだ。
エアコンをつけようかと思ったが、それよりも、もっと直接的な温もりが欲しいと思った。
毛布にくるまったままベッドを降りた僕は自室を出て、隣の部屋のドアをそっと開いた。
窓際に置かれたセミダブルのベッドの上。
山型に膨らんだ羽毛布団が、一定のリズムで上下している。
僕はそっとその布団を捲り、素早く体を滑り込ませた。
(ああ……、あったかい……)
モゾモゾと体を動かし、この温もりの主の背中に抱きつくと「ん……、なんだよ……」と、眠そうな男の声が聞こえた。
それに構わず足先を彼の足に絡ませると、
「冷てえ」と言って彼は寝返りを打ち、僕の方に体を向けた。
「……寒いな」
ずれた布団を顔の近くまで引き上げながら、眠そうな声で彼が言った。
「もうこんな季節か」
鼻先を彼の胸元に擦り付けると、逞しい腕が僕を包んだ。
温かな抱擁に、寒さで強張っていた体が少しずつ緩んでいく。
「もう少し寝ておけ」
彼の唇が僕の額にそっと触れた。
大好きな人の温もりに包まれながら、僕はゆっくりと深い眠りへ落ちていった。
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