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味方が最大の敵?魔法学校入学試験
「入学希望者着席!」
人でびっしり埋まった体育館を、威厳のある女性の声が反響する。それでも体育館が広いだけあり、後ろの方の席では聞こえづらかった。しかし、集中している生徒ならば何ら問題ないというように、椅子に座る生徒のザッという音が重なり、椅子が共鳴する。周囲を見た感じざっと2000人は優にいるだろう。でも、それだけの数の生徒がいるのに、喋り声1つない静寂と周囲を視線でにらみ合う緊張感がはしている。それも仕方がないことで、この中の半数の生徒はこれから行われる試験で間引かれるからだ。空気がピリピリと痺れている状況で、ぺちゃくちゃとしゃべるような者は一人もいない…………はずだった。
「ねぇ、ゆうと。一緒に今回の試験の課題当てゲームしない?」
少しでもいい印象を与えるために、完璧な姿勢で座る僕に対して、日常会話程度のかなり大きめの声で話掛けてくる。この静寂な空間においての例外こと、僕のお姉ちゃんである『あきね』。見た目は清楚で綺麗な黒髪を腰までまっすぐ伸ばし、座った状態で体を近づけられると鼻孔をくすぐるフローラルな香りのする。まさに完璧なお姉ちゃんなのだ。しかし、性格は惜しいことに見た目とは真逆で、ギャグとボケ大好きの典型的なオタクだった…………。
「あきねぇ、葬式でトランプする人はいないでしょ?それと同じだよ。だから、静かにしてくれ。」
僕たちはただでさえ後ろの席に座らされて、聞こえづらい校長先生の話を聞き逃すわけにはいかないんだ!と自分の目力で伝える。一方、僕の思いが伝わったのだろうか?失敗したという後悔の表情と心配するような顔であきねぇは、僕の手を温かくも柔らかい手でガッと握る。
「どしよう、人が亡くなっている葬式会場なのに、私白い服を着てきちゃったわ…………」
一見自分の失敗を反省し、自分の過ちで生まれた怒りをどこにぶつけたらいいか分からない表情。そして、あきねぇは決して天然ではない。生まれてからずっとあきねぇの側にいる、僕だから分かることがある。それは少しばかり暗い顔でしてくる質問はボケで、相手を慈悲で包みそうな顔は演技であること。さらに、汚れ1つのない真っ白なワンピースが、心の中を表しているように見えるから尚たちが悪いことも……。
「ここ葬式じゃないってわかっててやってるだろ!あと、いくら服装自由だからって、人生を左右する試験会場は、真っ白のワンピースで来るところではないだろ」
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