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味方が最大の敵?魔法学校入学試験
真っ白なワンピースに、負けないほどに白く透き通るような肩を、大胆に露出したデザイン。周囲の音がない状況で彼女と見つめあったら、黒い瞳の深淵に吸い込まれてしまいそうだ。まあ、黙っていればの話だけど……。つまりこの状況は、僕にとってはあきねぇに2つの意味で喋らないで欲しい状況と言っても過言でない。
「私は常にゆうとの姉として見た目と、退屈させないことに気を使って居るのよ。だから、葬式会場でトランプをしたいという、弟のお願いを叶えられない姉ではないのだ!」
私っていいお姉ちゃんでしょ?と言いたげに小さな胸を張り、応援団のようにエッヘンと腰に手を当てる。しかし、折角僕は背筋を伸ばして完璧な聞く姿勢を作っているのに、姉の声が邪魔で全く校長の話が入ってこない。これではどっちの話に耳を傾けているのか分からない。あと、今は先生の話を聞かなければならないから、全然退屈してないんだけど?あまり声を出したくないけど、仕方がないと姿勢を変えずに、顔の向きだけをスッと変える。
「僕のお願いを叶えることは簡単にできるよ。黙って前で話をしている校長先生の話を聞け!」
さっきから今後の人生を左右する話をされているのに、日常生活で毎日聞いているボケを聞かないといけないのさ。という切実な思いあきねぇぇに届け。すると、エッヘンと後ろで手を組んでいたあきねぇが…………。
「じゃじゃ~~~ん、トランプ~~。一緒にしたかったんでしょ。」
「だから、ここは葬式会場じゃねぇよ!いや、葬式会場でもトランプはしないけど……僕たちがここに要る理由忘れたの」
そう、僕たちは基本的に貴族だけが通うことのできる魔法学校に、平民という立場で通うという目的を掲げてここまで来た。なぜなら、いつまでも貴族にこき使われて、馬鹿にされるのが腹立たしく思ったからだ、主にあきねぇが……。今までに一度も貴族の学校に通った平民は存在しないらしいが、そんなことは関係がない。つまり、僕たちは周りに流されず、新しい時代を作るためにここまで来たのだ。と、あきねぇが熱く語っていたから、僕の心が動かされたというのに…………。なんで、あきねぇの方がやる気ないんだよ、というやり場のない怒りを、拳をギュッと握ることで和らげる。一方、あきねぇも流石に僕のお姉ちゃんで、僕の真意を理解したのだろう。うんうんと探偵のようにあごに手を当てて頷く。
「そうよね。私たちはこの不平等な世の中を動かすためにここまで来たのよね………………だからこそよ、周りと同じことをしてはいけないわ!さあ、トランプしましょ。」
ダメだ。やっぱりこんなことでは通じないかと、いつも通りため息を着かされる。ここで周囲の「うるせえよ」という怒りの視線が僕たちに突き刺さり始めていることに気づき、顔が引きつる。まずい、これ以上は試験の成績にも響きかねないし、これ以上周りに迷惑を掛けられない。大丈夫、姉の扱い方は一番よくわかっているはず…………。
「あきねぇの気持ちは嬉しいよ。でも、ここで葬式をしているわけではないから、時代を変えることにはならないよ」
諦めてあきねぇの話に乗っかるしかない。これ以上の解決策が分からない。
「何ですって!ここ葬式会場じゃないの!」
口元に手を当てて目を見開く、明らかにオーバーなリアクション。絶対に分かったうえで僕を困らせに来ている。
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