雨の公園

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雨の公園

私は公園のベンチにいた。 冷たい雨が私に降り注いでいた。 ・・・もう、どれだけこうしているのだろう。 ・・・いつまでこうしていれば救われるのだろう。 寒くて寒くて、堪らない。 私は背中を丸め、小さくなって、震える事しか出来なかった。 ・・・私はあの人に置いて行かれたのだろうか。 だって、すぐ戻るって言ったじゃない。 私、またあなたに会いたいって信じて、待っているのよ。 なのに、こんな仕打ちって酷いわ。 ・・・私が何をしたっていうのよ。 そりゃあ、ちょっとはいたずらしたりはしたけど、あなただってしたんだから、一緒よ。 ・・・寒い。 誰か、助けて。 私を、見つけて。 そして私を、抱き締めて。 それから・・・。 ・・・そんな時だった。 「おまえ、こんな所で何してんの?」 寒くて震えながら、ゆっくりと顔を上げた。 雨で視界は悪かったけれど、その声は私に向けられているのだと、すぐに解った。 だけど、完全に凍え切った私の口からは、声すら発せなくなっていた。 「こんなに濡れて、寒いだろうに・・・。」 そう言って私の顔を両手で優しく包み込んだ。 あたたかい・・・! 「あーあ、こんなに冷えて・・・。どうしたんだよ、おまえ」 私は相変わらず声が出てこなかったけれど、辛うじて微笑った。 彼は私の様子を見て、直ぐに状況を理解したようだった。 「・・・ひとりで寒かっただろ?ひでえ奴もいるなあ・・・」 彼は私の頬を温めるように撫でる。 その手の温もりから、私は彼の優しさを感じていた。 「・・・うちくるか?ここにいるよりはマシだぞ・・・?」 彼は私の意志に関係なく、がっしりとした逞しい腕で、私を抱き上げた。 ・・・私には既に、抵抗する力なんて残っていなかった。 このまま彼に、身を委ねるしか出来なかったのだ。 でも。 嫌じゃなかった。 ・・・彼に連れ去られたって、構わないとすら思った・・・。
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