12人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ
「レオンありがとうな。お前がいてくれたから、私は外の世界を知ることが出来たんだよ」
「あのね、おとうさん。あっちにね綺麗な橋があるんだ。一緒に行こうよ。ちゃんとぼくが手を引いてあげるから。だっておとうさん、目が悪いから、いつも方向音痴になっちゃうんだもんね」
「ああ、お前がいてくれたら私は道に迷うことはないね。連れて行ってくれるかい?」
二人の視線と会話は交わることはなかったけれど、心は通じているのだろう。
寄り添うように、白杖を持った男性は、嬉しそうに揺れるクリーム色の尾をなびかせた少年に手を引かれて歩いていった。
この場所で私は、少年の様に大切な人と巡り合えた光景を、何度見送ったことだろう。
懐かしい人を思い描いて、郷愁に駆られた私の心に吹く風は少し冷たい。
最初のコメントを投稿しよう!