タイムマシンのライカ

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    *  ――あそこにライカがいるよ、ほら。  見つけるのは寒そうな景色の中、野良犬の彼女。  ――ほんとうだ、話しかけるのは私に任せて。何しろ同じ犬だからね。  僕らはライカに駆けよって話しかける。  これから君に色んなことが起きて不安に思うだろうけれどだいじょうぶ、ぜんぶ直前で守るからって伝えるんだ。  実験に使われてしまう時はその装置からすぐさまこっそり連れ出して、偽の結果を研究者たちに送信しよう。  狭いケージでの訓練の時は、リアルな身代わり人形を用意して人間どもを騙してしまおう。身代わりなんかで騙せるかって? 騙せるさ。僕は天才だもの。  他の子たちもいるならその子たちみんなもだ。安心して、怖くない。君らに怖いことは起きないよって伝えて。  宇宙船に乗る時は怖がる振りだけをしてくれる? 打ち上げ直前でまた君を連れ出すよ。君は星になるだなんてことを言う奴らは、永遠に偽の結果と嘘の情報を信じていればいい。  ――さぁこれは君のためのタイムマシンだ。  あたたかな座席に座ってくつろいで。美味しい食事もあるよ、一緒に食べよう。  ――美しいお嬢さん、これから未来で共に暮らそう。  ――ノア、おじいちゃんのくせにナンパ?  ――そんなつもりはない。君の話を聞いていたせいかな、彼女を娘のように思うんだ。きっと良い相手を見つけてあげてくれるね?  任せてよ、と僕は胸を叩く。  そんな僕らのやりとりを、ライカはぽかんと見ている。  ああ――良かった。 「やっと笑ってくれたね、ライカ」
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