5人が本棚に入れています
本棚に追加
プロローグ
何かないだろうか、手頃なものが。
彼は焦っていた。
あれはもう、限界にきている。
捜せと彼に圧力をかけてくる。
矢のような催促とはこのことだ。
まったく、寝る暇もありゃしない。
無理だなどと言えば、間違いなく殺される。
頼む。
何でもいい。
見つかってくれ。
お願いだ。
あれの満足のいくものだったなら、どんなものでもいいのだから…。
そして、ある日、彼はついに見つけたのだった。
そんなに簡単に見つかるとは思っていなかっただけに、正直彼は驚いた。
ひと目見るなり、閃いたのだ。
そうか、これが使えるぞ。
これには、こういう使い方もあるはずだ、と。
なんて冴えてるのだろう。
俺は天才か。
笑いがこみ上げてきた。
実にちょうどいい。
まさに理想的だ。
僥倖としかいいようがない。
これなら刃物も必要ない。
俺の腕の力だけでなんとかなるだろう。
実際やってみると、簡単だった。
元から弱っていたらしく、それはろくに泣きもしないで息絶えた。
あとは力任せにねじ切るだけだった。
これでいい。
とりあえず、1週間はもつはずだ。
戦利品を入手し、意気揚々と引き揚げながら、しかし、と彼は思った。
次はこうはいかないに違いない。
道具が要る。
あれに催促される前に、早めに用意しなければ…。
最初のコメントを投稿しよう!