ウトウトする普通の犬

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 あの男は、賽銭(さいせん)どろぼうでした。これまでも、あの棒のような道具で賽銭箱をこじ開けて、このお寺のお金を盗んでいたのです。年が明けて中身が重くなっている今を狙うなんて、欲ばりな人間です。 (仏の顔も三度まで、なのだ)  心の中でそうつぶやいて、犬はまたウトウトし始めました。しばらくそうしていた時。  シー。  嫌な予感がしました。  犬が恐る恐る目を向けると、下の方――石の台座の根元で、一匹のチワワがおしっこをしているではありませんか。 (あー、またなのだ! だからイヌは嫌いなのだ!)  みんな、いい子のココナッツちゃんを少しは見習うべきなのだ。そう思いつつ、犬――狛犬(こまいぬ)は、(いか)つい顔をもっと厳つくするのでした。  
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