三組目

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「お嬢さん。風邪を引かれますよ。せっかくのドレスもびしょ濡れです。傘を差したらいかがです?」 「お気遣いどうも。これは日傘ですの」 「ではその辺の店で雨宿りをされてはいかがです?」 「結構ですわ。雨に濡れるのが好きなの」 「変わった方ですね」 「よく言われますわ」  と笑顔で返され、紳士の貴婦人に対する興味は更に深まった。 「実は私も少々変わった人間でして」 「その耳を見れば判りますわ。エルフの血が入っているようですわね」 「ええ。それだけではなくハーピーとケンタウロスの血も入っておりまして」 「そうですの? でも貴方からは鳥や馬の要素を感じられませんわ」 「まあ母はエルヒューマンとヒューピーの子エルピューマンで、父は人間とケンタウロスの子ケンタマンで、私はその血を受け継いだ“エルピタロウマン”ですからね。それほど魔物の血は濃くないんです」 「なんだかややこしい家系なんですのね。まあ今の時代なら珍しくもないですけど」 「それより立ち話もなんですしどうです? 近くの店でお茶でも」 「ごめんあそばせ。わたくしと関わると、ややこしい家系が更にややこしくなると思いますわ」 「はて。見たところ貴女は普通の女性に見えますが」 「ええ。わたくしは普通の」  言いかけたその時、スカートの下から、緑色の何かが伸びてくる。  それは植物のツタで、貴婦人の下半身は、何本ものツタが蛇のようにうねっていた。 「人間とアルラウネのハーフ、“アルラウーマン”ですわ」 「アルラウネ……。植物の魔物ですか」 「ええ。周りの男たちはこのエレガントな姿を見ただけで気色悪がって逃げ出すのですけれど、貴方はそうしないのですわね」 「両親や祖父母がアレですから。奇抜な見た目には慣れております。というか、ますます魅了されました」 「残念ですけど、わたくし普通の見た目の殿方は趣味じゃありませんの」 「実は私、物凄い鳥肌なんです」 「鳥の要素そこですの!?」 「あとアソコが馬並です」 「お付き合いしてもよろしくてよ」  なんだかんだで二人は夫婦となった。
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