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私の家は田舎だ。山一つ向こうにある都市の住人が、飼いきれなくなった犬や生まれてしまった子猫を捨てに来るのにちょうどよかった。田舎の農家の軒下に薄汚れた大型犬がつながれていたら、まず間違いなく捨てられた犬だ。運が良ければ第二の犬生、運がなければ保健所だ。
犬の生き死には、犬の能力に左右されない。運があるかないか。ただそれだけだ。
「兄貴」も捨て犬だった。穏やかな表情で犬小屋に入っていた。懐かしかったのだろう。
「兄貴」以降も、庭先を訪れる捨て犬たちに、うちの犬はことごとくなついた。けれども彼らはすぐにいなくなる。犬にとって、家族は人間だけだった。
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