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 俺が小振りの狛犬を一瞥して鳥居をくぐり、玉砂利と土が半々の境内に入ると、青年が顔を上げた。 「こんにちは」  穏やかに挨拶してくれる。丸みを帯びた目と鼻はどこか上品で、サラッとした同じく上品な髪はツーブロックだ。俺よりも数センチ背が低く、中肉中背。年は同じくらいかも知れない。  ペコリ、と頭を下げた俺は左右を(うかが)った。 「あの、ここってお(はら)い的なことできますか?」 「ご祈祷(きとう)ですか? でしたら、歩いて十二、三分ほどの神社に行かれるといいですよ」 「そういうのじゃなくて、その、ガチなやつです」 「ガチ?」  青年が大きな一重の目を(またた)かせる。その落ち着いた雰囲気に励まされた俺は、もう一歩踏み込むことにした。 「多分だけど、俺、呪われてるんです。助けてくれませんか?」  相手は少しばかり意外そうな顔をして、あごに手を添えた。 「そうですか……事情は分かりませんが、それなら、ここのお掃除でもしていかれますか?」 「掃除ですか?」 「汚れを払うということは、悪いものを払うことに通じるといいます。神社ならなおさらです。あなたの問題を解決する力になるかも知れません」  勇気づけるように微笑みを浮かべる青年。パアッと希望の光が差した気がした。  
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