柴犬の様なその人は

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「戸田さん、おはようございます!」  昔ながらの日本家屋の戸がガラリと開けると、中から赤毛の柴犬が飛び出してきた。 「お~!、ショータロー!今日も迎えに来たぞ~」僕の足元へすり寄ってきた小さな頭をわしゃわしゃと撫でる。人懐っこい顔の愛らしい中型犬は、今日も満足そうだ。 「おはよう、佐藤君、今日もあなたなのね」ショータローと戯れる僕に、この家の家主であり、お得意様の戸田さんがいつものように、少し意地悪く話し掛ける。しかし、どこか様子がいつもと違う。 「戸田さん、もしかして風邪ですか?」 「多分、最悪よ……今朝から急に体調が悪くて」そう言った戸田さんの顔は確かに青白く、足元の赤毛も飼い主を心配そうに見上げている。 「そうですか……あ、散歩終わったら必要なもの買い出しに行きますよ」 「本当?じゃあ、風邪薬買ってきて」 「勿論!だって、僕は何でも屋ですよ?」そう言った僕に、戸田さんは「そうね、でも、あなたじゃなくて、柴崎さんに来てもらえるとすぐに元気になると思うけど」と言う。 「まあ、そう言わずに、あ、そうだこれ、所長からいつものクッキーです」そう言って、茶色い紙袋を渡すと、「うわあ……いつも、本当にありがとう」と、少し高い声で言った。 「何か、これだけで元気出るわ、佐藤君、ショータローをよろしくね」  閉められた扉の向こうで、鼻歌が聞こえる。思わず小さく息を付くと、足元の赤毛が労るようにすり寄ってきた。 「ああ、ごめんよ、ショータロー。よし、じゃあ、行くか!」  賢い柴犬がワンと吠えた。
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