柴犬の様なその人は

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「ところでさあ、君の仕事は何だっけ?」 「……な、何でも屋です」 「そうだねえ……何でも屋さんの君に、俺から依頼があるんだけど」  思わず生唾を飲んだ。 「……何ですか?」 「俺の“依頼”を何でも、聞いてもらえるかなあ?この先、俺が飽きるまでずっと」  僕の仕事は、「何でも屋」。仕事内容は、その名の通り何でも。依頼主から頼まれたことは、何であろうと断らず何でもやる。 「……わかりました」 「いい返事が聞けて嬉しいよ!あ、あと、君も、さっきのアイツらと一緒に“何でも屋 夜間の部”でも働くといい。君は仕事は出来ないけど、人間に可愛がられる素質があるからね。向いてると思うんだ。」  僕に拒否権など存在しない。それは、きっとこの悪魔に拾われた日から。 「……わかりました」  僕の答えを聞いた悪魔は、満足そうに僕の頭をわしゃわしゃと掻き回しながら、立ち上がった。 「とりあえず、君の家行って荷物取ってくるわ。ここに住んでもらわないとだからね。俺ってやっぱり、超優しいなあ~」左手で、僕が忘れた家の鍵がクルクルと回っている。 「じゃあ、いってくる~」と、僕に背を向け、悪魔が部屋を出ようとしている。 「……いってらっしゃい」僕は、思わずいつものようにそう言っていた。  悪魔の足が、ピタッと止まった。  そして、くるっと振り返ると、一瞬驚いたような表情を浮かべた。視線が交わる。悪魔はすぐに柔らかい目に戻り、楽しそうにハハッ!と笑うと、ツカツカと僕の元へ来てしゃがみ込んだ。  両手で僕の頭を掻き回しながら、口元に少年のような満面の笑みを浮かべて言った。 「君は本当に、面白いねえ!」  見開いたままの真っ黒の瞳に映った僕は、笑っていた。  
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