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首元をさすると、頭を擦り寄せてクーンと鳴いた。リードをつけて玄関を開けると、ヒデに力強く引っ張られた。ハアハアと舌を出し、どんどん歩いていく。大きくなったヒデは随分頼もしくなった。
「ヒデ早いよ」
時折、リードをクッと引っ張る。慣れない私との散歩だから、ペースがつかめないのかな。
「あら、ヒデちゃん。今日は、りっちゃんとお散歩ねぇ、良かったねぇ」
「村上さん、いつもありがとうございます」
子供の頃に呼ばれていたニックネームが、懐かしくて照れくさい。今は「りっちゃん」と呼ばれることがほぼない。
「正春さん、急だったねぇ。ついこないだ、モロッコインゲンいっぱいもらって美味しかったわぁって、話したばかりでねぇ」
村上さんは葬儀にも参列してくれて、本当にいろいろと家族ぐるみでお世話になった人だ。村上さんが「寂しくなるねぇ」と目を潤ませながら話すから、私も喉の奥がぎゅっと詰まって、言葉が出てこなかった。子供たちの手前、泣き出すわけにもいかず、鼻を啜り目線をそらした。
「あ、そういえばりっちゃん、ヒデちゃんはどうするん」
「連れて帰ってうちで飼います」
「そうね、ヒデちゃんもそれがいいね」
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