私をさがして

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第15章 小枝子  ―私を捜してー  小枝子の携帯に届いたメールにはそう書かれてあった。それは冴子から届いたものだった。小枝子はまた冴子の冗談が始まったのかと思った。それで彼女の携帯に電話をしてみた。しかし、彼女は出なかった。 「何を馬鹿なことやってるの? それは男の子に向けて送るメッセージでしょ!」 そこで小枝子はさっきのメールにそのように返信した。しかし、それにも冴子は反応がなかった。小枝子はどうしてそんなわけのわからない遊びに自分を巻き込むのか意味不明だった。 (でも……)  でも、私はそのメールに気になることがあった。それは前に冴子に一通のメールを見せられた日のことだった。 「小枝子、こんなメール来ちゃった」 「メール?」  私は、また男の子からの熱いメールかと思った。 「また男の子にあのメールを送ってヒートさせちゃったの?」 「うん」  でも、その返事がいつもとは少し違っていた。 「違う意味で熱くしちゃったみたい」  冴子は笑っていたが、少し不安そうだった。私は見る気がなかったメールに急に関心が高まった。 ―あなたを捜して、どうしてくれようか―  少し不気味だった。 「ちょっと気味悪いけど、悪意はないんじゃない?」 「そうかなあ」  このような内容の返信は初めてだったらしい。 「誰からの返信なのかはわからないの?」 「うん。わからない」  冴子の軽い気持ちが仇になった。 「もうやめようかな」 「その方がいいよ」 「でも、相手がわかっていればやっても平気だよね」 「もう!」  こんなことがあったから、私はてっきり冴子があのメールを送ることをやめたと思っていた。それが大学のサークルの部員にまた送ったという話を聞いて驚いた。 「だって、誰に送ったかは忘れたけど、少なくても部員であることははっきりしてるから、何かあっても平気だよ」 「どうして送った人を覚えてないの?」 「覚えてたら、それこそ悪意が生まれるよ。顔とか格好が良かったのを覚えてたら、遊びでなくなっちゃうかもしれないし。私は軽い遊び感覚なの!」 「軽い、遊び」そういうキーワードが冴子にこのことを止めさせない理由になっていたようだった。 「でもね」 「でも?」 「もし前みたいなあんなメールが来たら」 「あんなメールって?」 「なんか脅迫するみたいなメールが来たでしょ」 「あ、うん」 「それでもし私に何かあったら」 「変なこと言い出さないでよ」  私は冴子のその先の言葉を遮ろうとした。 「そうしたら、小枝子、助けてくれる?」 「え?」  冴子は真剣な目で私を見ていた。 「う、うん……」 「私、小枝子にメールするから」 「うん」 「私を捜してってメールする」 私はそのことを思い出して急に冴子のことが心配になった。冴子は、いつもいい加減なことばかり言って、人に迷惑ばかり掛けている子だったけど、今回は真面目に危ない状況にいるような気がしてならなかった。  
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