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ネムとシャオランはオーディション帰りの咲耶のあとを静かにつけていた。通常だったら尾行はばれてしまうだろう。しかし心ここにあらずといった様子の咲耶は、ふたりの尾行にまったく気づかなかった。
「咲耶はアイドルオーディションに行ったみたいだけど」
「いい手ごたえじゃなさそうですね...」
ふたりは元気のない咲耶の後姿をじっと電柱の影から見つめた。100m近く離れているが、忍者の修行を受けているふたりは目視で確認でき、何か話しても忍術で聞き取れる。
「ううん、今日のアイドルオーディションこそいけると思ったのに。アイドルになりたいよー」
歩きスマホをしながら次のオーディション日程を確認している咲耶。
「弱気になっちゃダメ、今回がダメなら次行こ、次!」
咲耶は気を取り直すように自分の頬を叩いて自身に喝をいれたとき、大きな鐘の音が聞こえてきた。
「教会の鐘の音?」
咲耶が歩いている歩道から道をへだてた所に教会が建っている。ちょうど結婚式を執り行っているようだ。
「きれい...」
新郎新婦がフラワーシャワーとおめでとうの言葉を浴びながら、ウエディングロードを歩く幸せそうな姿を見た咲耶から思わず言葉がこぼれた。
「やっぱり新婦さんのウエディングドレス姿、本当に素敵! あこがれちゃう!」
新郎新婦の幸せそうに階段を下りていく姿を見て、咲耶はあこがれを隠せずに見ていた。そんな咲耶の姿を見たネムとシャオランは、顔を見合わせる。
「やっぱりウエディングドレス姿にあこがれてんじゃん」
「CMオファーいいと思うんですけど...」
なんでだろうと頭を悩ますふたりの姿を見たパンダの式神のリーリーは、シャオランに聞いた。
【ねえねえ、咲耶のことが気になるの?】
「だって咲耶さん。ずっとアイドルになりたいって言ってたのに、どうしてCMのオファー断っちゃうのかなって...」
すごく似合っていたのにとシャオランはぽつりと言った。
ふむとリーリーは考え込んだ。
リーリーはシャオランが大好きだ。
シャオランが悲しむと、リーリーはすごく悲しくなる。
それはイヤだなと思うリーリーは考える。
今シャオランを悩ましている内容は、咲耶のことだ。
ならば、咲耶の悩みを解決すればいい。
リーリーはそう思い立ったのか、さっとシャオランに向かって言った。
【じゃあ、リーリーが咲耶に聞いてみるよ】
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