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「えっ...? リーリー?」
「ちょっと待てって、うわ、速っ!」
シャオランはぽかんとしていると、リーリーは咲耶のほうへ走り出した。慌ててネムはリーリーを捕まえようとするが、リーリーはネムの手をするりと抜け咲耶へ声をかける。
【咲耶さーん】
とことことリーリーは手を振りながら、咲耶のほうへ走って行く。
「リーリーこんなところでどうしたの? 今、師匠と修業中だよね」
【咲耶さんが元気ないみたいだったから気になって、みんなでついてきちゃった】
リーリーは電柱越しに隠れるネムとシャオランの方を指す。
「(リーリー! 尾行していることは咲耶さんには内緒なのに...!)」
シャオランは自身の式神の予想外の行動にひえっと声をあげた。ネムは仕方ないかとつぶやくと、咲耶のほうへ歩いて行く。
「悪かったよ」
「私たち、咲耶さんが心配で」
岩爺の指示で尾行していましたとは、本人の前では言いづらい。
「私そんなに元気なかったかな?」
しかし咲耶は尾行よりふたりに心配をかけたことを気にしているようだ。するとリーリーはさっとシャオランの肩に乗ると、咲耶と同じ高さの目線で訊ねた。
【ねえねえ、なんでCMのオファー断っちゃうの? せっかくのチャンスだよ?】
「あ、みんなそれが気になってたの?」
咲耶にとってみんなが気にしていた部分が意外だったみたいだ。
「当たり前だろ」
「何か嫌なことでもあったんですか?」
「ちがう、ちがう! そういう理由じゃないよ! ただ...」
「「ただ?」」
ネムとシャオランの声が重なる。
「今回のWebCM、ウエディングドレスでリング交換するところも撮影するみたいで、私好きな人にはめてもらいたい派だし...」
そうやって両手で赤くなった顔を押さえる咲耶は、忍者の顔ではなく年頃の女の子の顔だった。
「私だってすっごくすっごく悩んだけど、やっぱりウエディングドレスは好きな人と一緒に着て歩きたいなあって...」
咲耶はもじもじと恥ずかしそうに答えた。ネムは咲耶の答えを聞くと、すっと納得した。
「(なるほど、咲耶なりのこだわりがあったんだな)」
「(咲耶さん、けっこう乙女ですよね...)」
咲耶の中でアイドルになりたい事と同じくらい、好きな人と結婚することに憧れがある事をはじめて知ったふたりだったが対して驚きはなかった。以前から、女子力高いなあとか、乙女っぽい所ありますよねと思っていたからだ。
するとリーリーがませた小学生が茶化すように咲耶へ言った。
【リーリー、分かるよ。そういうのお・と・め・ご・こ・ろって言うんだよね!】
「そ、そうだよ。乙女心だよ! 自分の乙女心は大事にしなさいって、おばあちゃん言ってたもん!」
咲耶は自身の乙女な部分を隠していたかったらしい。ネムは「ははっ」と笑うと咲耶の背中をバンバンと叩いた。
「いいじゃん、譲れない大事な考えなんでしょ?」
「私は咲耶さんのそういう所、いいと思います...」
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