定位置はストーブの前

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定位置はストーブの前

「ただいまー!」 『ただいま帰りましたー!』 「お帰りー」  お母さんは、こたつに入ってミカンを食べている。 「外、寒かった?」 「うん。しかも、大ちゃんに付き合ってアイス食べちゃったから、マジで冷えた」 『僕、全部食べれるのに。無理して付き合わなくて良かったんですよ』 「ダメだよ。食べ過ぎになっちゃうよ、大ちゃん」 『それよりも早くストーブをつけてください』 「自前の毛皮があるんじゃなかったの?」 『それはそれ。これはこれ。ストーブの前は、犬にとって天国なのです。早くつけてくださーい』 「犬って、割と都合のいい生き物だったんだね。大ちゃん」  大ちゃんはストーブの前に陣取ると、あくびを一つしてコンパクトに丸くなった。  私はお母さんとコタツに入って、体を温める。 「瑞穂、何を検索しているの?」  コタツでスマホをいじる私に、お母さんが聞いてきた。 「今度の休暇、大ちゃんと泊まれるホテルを探そうと思って」  大ちゃんのお洋服デビュー、楽しみだ。  きっと可愛いぞ。 『割引率を最重要視するお母さんと瑞穂ちゃんのお金の使い方考えると、少し不安になります』  大ちゃんが顔を上げて、こちらを見る。 「任せといて。お値段以上の素敵なホテルを見つけちゃうから」 『瑞穂ちゃん、美味しいもの食べられる所をお願いします』 「(了解)!」  私は大ちゃんに、片手をあげてポーズを取った。 『本当かなぁ』  と言いながら、大ちゃんは鼻先を前足の間に突っ込んで眠っちゃった。  お母さんの言った通り、飼い犬との会話ってプライスレス。 【ワウリンガル】、控えめに言って最高ね。 (終わり。)
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