類似品にご注意を

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類似品にご注意を

『瑞穂ちゃん、こんにちは!』 「わ、大ちゃんが喋った! びっくりした!」 「本当だ、喋った! なんで? 首輪に言葉が表示されるんじゃないの?」  お母さんが慌てて、買ってきたパッケージをよく読む。 「あらまあ、大変! お母さん、間違えて粗悪な類似品を買って来ちゃったみたい」  大枚はたいて買った品が、類似品と知って、母はショックのようだ。 「類似品?」 「これ、【バウリンガル】じゃなくて【ワウリンガル】ですって。犬が思っていることを、音声にしてくれるんだって」  パッケージに書かれてあることを読んで、母が衝撃を隠せない。 「それは粗悪な類似品というよりも、かなりバージョンアップされた改良類似品なのでは?」 「それで高かったのかー」  私の予想通り、この機械は高かったみたいだ。 「良かったわね、O谷さんが声を担当してくれてるって」  道理で聞き覚えのある声だと思った。 「喜ぶとこ、そこ?」 「だって、瑞穂ちゃんは大ちゃんの声がジャイアンの声でも嬉しい?」 「……K村さんに謝れ」 「そうね、名犬チーズの声でもいいわね」  意外に母は声優オタクのようだ。 「ああ、O谷さんの声で良かったー!」  とりあえず、母の話が異常に長くなりそうなので、私は大袈裟に喜んで見せてこの話を強制終了させた。
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