おやつを食べよう

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おやつを食べよう

 お散歩でいつも行く公園。  そこに、この寒いのにアイスクリームのキッチンカーが出てた。  口を開けて舌を出し、大ちゃんがそこでピタリと分かりやすく座り込んだ。 『ねえ、瑞穂ちゃん。喉が渇きませんか?』  搦手から攻める大ちゃん。  小賢しいけど、可愛いぞ。  あんまり可愛いから 「そうだね。大ちゃん、公園のお水飲む?」  わざと言っちゃった。 『ううん、もう。分かっているくせに……』  大ちゃんが、くぅーんとおねだりの声を出した。 「アイス……500円かぁ」  なかなかのお値段だ。 「さっき、ハーネスだけじゃなく大ちゃんのお洋服まで買っちゃったしなあ」  財布のひもが固くなった私に 『僕としてはこちらの方が嬉しいお買い物ですよ。さあ、買って!』  大ちゃんが目を光らせておねだりする。 「……玉ねぎ入っているかもよ」 『お食事系クレープじゃあるまいし、そんなアイス聞いたことがありません。さあ、買って!』  いくらリードを引いても、大ちゃんは頑として動かない。 「もう、しょうがないなぁ」  結局、大ちゃんの圧に負けて、アイスを買って半分こにした。 「ちょっと、私、甘いかな」  大ちゃんにメロメロの自分を反省していると 『アイスとは甘いものですよ』  と、大ちゃんは勘違いしてた。 『いい買い物でした』  大ちゃんは満足そう。 「うう、散財ー」  私が唸ると 『えてして、人間の都合と犬の都合は合致しないものです。越えられない種族の壁です』  と説得された。  本当、大ちゃんって難しい言葉知ってるね。 『瑞穂ちゃんが居ない間、お母さんがTVをいっぱい見せてくれるのです。僕の学びの場はそこです』 「凄ーい! 大ちゃん、賢い、賢い」  と頭を撫でた。  大ちゃんは嬉しそうに目を細めながら  『TVで、【ばか親と親ばかは紙一重】と言ってました。瑞穂ちゃんもそうならないように気を付けてくださいね』  と、言った。  さっき親ばかで買ったアイス、返せ。
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