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「正確に言うと戦死とは違うがな。捕虜に対する虐待を理由に連合国軍に極秘逮捕され、BC級戦犯として即日処刑された。敗戦後の混乱の中、外交上の火種になる事を恐れた双国の思惑により全ては闇から闇へ――」
「出鱈目を言うな!粗野で鼻持ちならない官憲の犬め」
彼はマホガニーの執務机から護身用の銃を取り出しかけたが、思い直して机に掛けると隅の呼び鈴に手を伸ばした。
「僕としたことがとんだ見込み違いだった。末期の申し開きくらい聞いてやらないでもない」
刺客を呼ぶ前に最後の審判よろしく昂然と告げる。
木崎は頬を痙攣させた。
「まあ、話は最後まで聞けよ、王子様――これは、表向きの裏の話だ。確かにあんたが目下お探し中の瞼の弟君は公には戦死した事になっている」
佐鳥は何を今更、とでも言いたげな苛々した表情で相槌を打った。
「そうだよ。だが僕は彼の旧友に会った。国内で再会したって言うんだ――資料で読んだろう?話は聞きに行ったんだろうな?」
「必要ない」
そう言い切る木崎に、佐鳥は綺麗な弓形の眉をつりあげた。
「国家だのご正道なんてのは、あんた達の世界に勝るとも劣らない伏魔殿さ。公式に一度ならず二度までも殺されてるって事は、どういう事だと思う?裏の話にはまた裏がある――つまり表だ」
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