42人が本棚に入れています
本棚に追加
苛立ちが頂点に達した佐鳥は天板を叩いて飛び降り、
「言葉遊びや判じ物につき合う気はない。結論を言え」
と叫んだ。
木崎は突然彼との距離を詰めた。逆に追い詰めるように机に両手をつき、頑丈な閉じ込めてしまうと耳元で囁いた。
「あんたの弟、柾規は生きている」
男を睨みつけていた佐鳥の瞳が揺らいだ。
「……まさか君……あ、会ったのか!柾規に……」
木崎ははぐらかすように肩をすくめると身体を離し、芝居がかった仕草で後退りながら頷いた。
「ならば何故、僕の依頼通りここに連れて来ない?」
「本人が名乗り出るのを拒否している。言ったろう、裏があるって……表に出られない立場なんだ」
木崎はそう言うとコートのポケットから何やら取り出し、佐鳥に向かって放り投げた。思わず受け取ったそれは古びた新聞紙の包みだった。くしゃくしゃで今にも破れそうな脆い包みを開けると「しどういさみ」と記名された錆びた肥後守が出て来た。佐鳥は見る間に血相を変えた。
「どういう事だ!お前がどうしてこれを持っている」
「面白いな。普段はケースの中の国宝よろしく取りすましてるあんたが、そうやっていちいち取り乱すの」
佐鳥は手にした小刀で刺しかねない勢いで木崎を睨み返した。
「勿体ぶるな。知ってる事を全部話せ」
最初のコメントを投稿しよう!