重なる骸

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「……」  落ち葉と思っていたものは、別のものだった。  落ちていたものは二匹のヤママユガ。羽を広げた大きさは、十五センチメートル程。  重なるようにして落ちていたそれらは、微動だにしない。どうやら既に死んでいるようだ。  重なっている二匹だが、上の個体と下の個体とで色合いが違う。  上の個体は地味な褐色だが、下の個体は黄色みの強い明るい色をしている。  よく見ると、触角も違う。上の個体の方が、ふさふさしている。  上が雄で下が雌……ということは、夫婦なのだろうか。住職はそう思った。  二匹のちょうど上の方にある木の枝。目を凝らしてよく見てみると、小さくて丸いものが、いくつも付いている。卵だろう。  きっと、この二匹が交尾して、産み付けたに違いない。  ヤママユガは成虫になると口が退化する。  成虫になったら長くは生きられまい。  短い時間で必死になって相手を探し、やっとのことで見つけたのだろう。  そして、交尾を終えると力尽きて地面に落ちた。
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