ある家族の話

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「――ていうことがあってさ」  夕食を食べながら、夫に昼間のことを話す。  久しぶりにお惣菜を買った。  牛肉コロッケ、ハンバーグ、カクテルサラダとデザートのシュークリーム。  食品売り場にハルは入れない。  買い物をしている間、犬の待合所で待たせるのは心苦しかったが、今日だけは許してほしい。  もやもやした気持ちは、おいしい料理が解決してくれるはすだから。 「こっちはきちんとした権利があるのに、好き勝手言われてたまんないよ」  コロッケを一口頬張る。  電子レンジで温め直したせいか、衣のサクサク感は皆無だ。  でも、少しつぶの残ったじゃがいもがいい味をだしている。 「ハルも嫌だったよねー」    先に食べ終わったハルは、ソファでくつろいでいた。 「……なあ、シュークリームって何味買った?」 「カスタードと期間限定さつまいもクリームだよ」 「じゃあ俺はさつまいもで」 「いいよ。あ、ハルにもケーキ買ったからさ、先に食べないで一緒に準備してね」  夫は無口で、喋っているのはだいたい私だ。  でも不満はない。  いつも優しく話を聞いてくれる。  それだけで充分だから。  なのに。  夫の様子がおかしくなった。
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