ある家族の話

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 先週の土曜日、近所の子どもたちが外で遊んでいた。  私とハルは、ちょうど散歩から帰って一息ついていたところ。  可愛い息子は音に敏感。  騒がしい声が気になるようで、窓と私の間を行ったり来たりしていた。  家族にはリラックスした姿を見せるけれど、大人になった今でも繊細なのは変わっていない。  ギャーギャーうるさい人間の子どもの声は騒音に他ならない。  ここは大人が注意しなければ。  意を決して外へ出ると、彼らは顔を見合わせ逃げるように走り去った。  まったく。逃げるくらいなら、初めから騒がなければいいのに。  その日の夜、母親の一人が我が家へやって来た。   「あなたの犬は誰にでも吠えるじゃない。子どもたちは噛みつかれるんじゃないかって怯えてるのよ。それなのにいつもいつも……いい加減にして!」  謝罪に来たかと思ったのに、まさか理不尽な文句を言われるなんて。  ハルが吠えるのは他人に触られたくないからだ。  とても繊細な子。  それをこちらのせいにされるなんて不愉快だ。  だから私は言ってやった。 「うちのハルと騒音を一緒にしないでください」    異変に気づいたハルが、奥の部屋から威嚇のような声をだしている。  それから外で遊ぶ子どもはいなくなった。
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