50人が本棚に入れています
本棚に追加
12.こんな楽しいのは初めてだ⋯⋯。(キース視点)
「ルカリエ様、聞いていたより賢くない方ですね」
思わず、僕の本音が出てしまった。
彼女は聡明な絶世の美女ということになっているが、僕の前では本音を曝け出し過ぎて危なっかしい。
もう少し、慎重にならないと敵はどこに潜んでいるか分からない。
僕がマサス王国に対して反逆心を持っているから問題になっていないが、他の人の前で王妃が国王から逃げたい等と言ったら大変なことになる。
後で自分の発言を顧みたときに、彼女が怯えないように僕は自分は反逆心があることを告白した。
「私のことは好き⋯⋯?」
「好きですよ。僕と共犯者になりましょう」
彼女が怯えながら言ってきた言葉に、僕は同情した。
結局彼女は男を味方につける方法を1つしか知らない。
僕は国王陛下が、魅了の力を手に入れたモリアをスグラ王国に派遣して強引にルカリエを奪った事実を知っている。
魅了の力は魔法の中でも上位の力で、モリアが力を手に入れるまで54人の女が死んだ。
国王陛下はルカリエを手に入れた今はハーレムを解散しているが、彼女を手に入れるまではハーレムを持っていた。
陛下はルカリエを想っても、手に入れられない自分の欲望をを発散する場所として用意していたのだ。
極寒の地で貧困にあえぐ、女たちは皆働き先としてハーレムに入りたがった。
陛下が選ぶ女は、皆どこかルカリエに似ている美しい女ばかりだった。
ハーレムの女たちに魅了の力を得る魔法薬を飲ましたが、力を得られず女たちは死んでいった。
そこで、目をつけられたのが、モリアだった。
モリアの双子の妹であるカリナが既に、魔法の中でも上位の力である治癒能力を得ていたからだ。
モリアとカリナは双子として生まれたが、彼女らの親は2人も育てられないと1人を選んだ。
魔法学校は学校とは名ばかりで、侵略のため作られた軍の訓練機関だ。
それゆえ、学費は免除されて給与が出る。
彼女らの親は妹のカリナに魔法の薬を飲ませることを志願した。
カリナが生きて魔法の力を手に入れられれば、金が定期で手に入れられるからだ。
彼女が魔法の薬で死ぬ可能性の方が高いのだから酷い話だ。
結局カリナは魔法の力を手にいれ、魔法学校に住み込みながら親に仕送りをしている。
そんな上位魔法を身に付けた双子の姉であるモリアに目を付けたのが国王陛下だ。
双子だから、モリアも上位の魔法を身に付けられるだろうと彼女に薬を飲ませた。
モリアは元々ハーレム入りを目指していたが、ルカリエに似たところが1つもなく不合格だった。
そんなところに、国王陛下から直々にお声がかかり少し可愛がってもらっただけで彼に心酔していた。
カリナは自分を捨てようとした親の愛を求め、モリアは親から捨てられなかったのに国王陛下の愛を求めていた。
2人とも利用されているだけなのに、敬愛する者に利用されることに喜びを感じているから厄介だ。
そして、愛してもいない男に愛を語り、抱かれ続けなければ生きられないルカリエも哀れだ。
僕は彼女に子供ができないように魔法を掛けた。
彼女に子供ができなければ、国王陛下も側室をとるだろう。
今のままだと、ルカリエは毎晩のように国王陛下の狂気な愛に晒され続けなければならない。
彼女は僕に友達になろうと言いながら、口づけをしてきた。
彼女の心をいくら読んでも、彼女に友達がいたことはない。
クリス王太子もレオナルド国王陛下も彼女を囲いすぎていて、周りが彼女に一線を引いていたのだ。
僕に友達になって欲しくて口づけをする彼女はめちゃくちゃだ。
心を読める僕には、彼女が僕に対して惹かれはじめている事も分かってしまっている。
年の差もある上に、彼女はこの国の王妃で僕は平民だ。
僕が滅ぼそうと思っている国の王妃に好意を向けられたら、僕の復讐計画に狂いが出る。
僕は彼女の為にも、その気持ちは恋じゃないと思わせることにした。
魔法学校の教室に案内してあげると、彼女は嬉しそうだった。
僕は国王陛下から、彼女には適当に魔法学校を見学させて満足させるよう言われていた。
しかし、彼女はここで皆と魔法の勉強ができると期待していた。
「自己紹介させてください! 今日から、魔法学校に入学しましたルカリエと申します。ルカって呼んでください。これから、皆さんと協力をして魔法を学んだり、時には恋とかしたりして学校生活を楽しみたいと思います」
半ば興奮状態で、自己紹介をしたルカリエに僕は笑いそうになった。
(マサス王国に連れてこられてから、こんな楽しいのは初めてだ⋯⋯)
彼女は王妃なのに、魔法学校に入学して初めての友達を作ることを楽しみにしている。
そして、僕と恋をしたいと思っているようだ。
僕は初めて他人の幸せを願った。
最初のコメントを投稿しよう!