18.私の気持ちを読んでよ。

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18.私の気持ちを読んでよ。

「別れさせるって、どうやって?」 「雪解けが来たら、大軍でマサス王国ごと潰してやる。モリアが拷問で吐いたんだが、全てはマサス国王の企みだったんだ」  私は、モリアはレオの命令でクリスに魅了の魔法を使ったと聞いたことを思い出した。   (モリアも生きる為に必死だったんだ⋯⋯私と同じだ)  私は、モリアには沢山嫌なことをされた。  しかし、彼女の境遇を考えると急に居た堪れない気持ちになった。  王命に従い彼女は好きでもない男の子供まで産んでいる。 (そんなこと、私にもできないわ⋯⋯でも、王命に逆らえる訳ないよ)    その上、今は我が子を取り上げられ、拷問まで受けているのだ。  本当に、身分とは何なのだろうか。  身分が高く生まれただけで、クリスもレオも女をモノのように扱っている。  今、私に愛を語る2人も、私を所有物のように扱っているだけで私の幸せを願っていない。  ガゴン!  船が凄い勢いで揺れて、クリスに咄嗟に抱きしめられた。  私を守る為の彼の行動なのに、彼の高めの体温さえも気色悪く感じる。 (本当に私、クリスが嫌いになってるんだ⋯⋯) 「失礼します。船が氷山に衝突しました。船が浸水し始めています」  ノックもなく入ってきたスグラ王国の騎士から伝えられた言葉に私は震えた。 「すぐに、周辺の島国に救援要請を出せ! 大丈夫だよルカリエ⋯⋯しばらく、島暮らしで不自由をかけると思うけど」  クリスはこんな時も落ち着いている。  彼は冷たい海がどれだけ怖いか知らないのだろう。  私は、マサス王国に住んで冷たい海に入ると1分も持たずに人が死ぬことを知った。  ガゴン!  また、大きな音がなった。  別の箇所も氷山に衝突したのではないだろうか。  浸水のスピードが早くなりそうだ。 「私、こんなところで死にたくない!」  私はクリスを突き飛ばして部屋の外に出た。  クリスは驚いた顔をしていたけれど、彼は自分が死ぬことなんて想像もしたことないのだろう。  でも、私は処刑されそうになった時から死の恐怖に怯えるようになった。  部屋を出ると、船は傾き沈み始めているのが分かった。 (これ以上、船が沈まないように何とかできない?)  心臓の鼓動が早く、初めての状況を前に私は何をして良いかわからない。  しかし、何もせずに死ぬのは絶対嫌だ。 (私の火の魔力で、氷山を溶かして、海を温めれば助けが来るまで生き延びられるんじゃ)  私は、咄嗟に周辺の海が燃えるように願った。  真っ赤な炎が氷山を溶かし、冷たい海の上に赤い炎がほど走る。  「ひいぃ、魔女だー!」  私が火の魔法の使える魔女だと再確認したように、騎士たちが私から逃げるように遠ざかり船頭に向かった。  そのせいで、船が極端に傾いてしまう。 (どうしよう、沈む⋯⋯怖いよ、キース!) 「ルカリエ!」  その時、キースの声が聞こえた。  滲む視界に見えた彼に私は思いっきり抱きついた。 「こ、校長室」 「瞬間移動を使ったからね。ルカリエ大丈夫だった。震えてるじゃないか」  キースが私に自分の着ていたジャケットを羽織らせて、抱きしめてくれる。 (どうしよう⋯⋯やっぱり彼が好きだ)  船は沈みそうだったが、すぐ近くに島が2つほど見えたからスグラ王国の人たちは助かるだろう。  海の温度も即死を避けるくらいには、高くできたはずだ。  裕福なスグラ王国に恩を売りたい国は多いから、救援要請には応じてもらえる。 「一回、お風呂であったまった方が良いかもな」 「ここってお風呂もあるの?」 「俺も含めて魔法学校の人間はみんなここに住んでるよ。だから、生活できるような設備は一通り整っている」 「私も、ここに住みたい!」  私は咄嗟にキースにお願いをした。  今、私はレオからは誘拐されたと思われていて、クリスからは海で死んだと思われてそうだ。 (こんなチャンス滅多にないわ)  私は、ここで大好きな人たちと一緒にこっそり暮らせるのではないかと想像した。 (キースと毎日一緒にいられる⋯⋯ワクワク) 「ルカリエ⋯⋯君は国王陛下とクリス王太子に囲われ過ぎて、僕に夢を見過ぎだ。僕は君よりも12歳も年上で、君の親との方が年が近いんだよ」  キースが私を諭すように言ってきた言葉に、私はショックを受けた。  まるで、私が男をあまり知らないからキースを好きになったみたいに思われている。  私は他の男を見ても、きっとキースが好きだ。  しかも、私は彼も自分が好きだと思っていた。  それなのに彼は自分の年を偽ってまで、私を突き放そうとしてくる。 (私のこと好きじゃないってこと? 好きじゃないなら口づけできないよね)  私はキースを知ってから、レオやクリスに迫られて彼らと口づけをするのは絶対嫌だと思った。  私が結婚しているから、私の気持ちはキースから見ると遊びのように思われているのかしれない。 (私の気持ちを読んでよ⋯⋯魔法使いでしょ)  私は寂しい気持ちになりながら、キースの用意してくれたお風呂に向かった。  
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