20.男が女に服をプレゼントする意味をキースも知っているのかな⋯⋯。

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20.男が女に服をプレゼントする意味をキースも知っているのかな⋯⋯。

「ねえ、こういう服がキースは好きなの?」  私は彼がお風呂上がりに用意してくれたブルーのワンピースを着ていた。  生地がふわふわしていて、雪国仕様になっていて温かい。  彼が私に服を用意してくれたのが嬉しい。 (男が女に服をプレゼントする意味をキースも知っているのかな⋯⋯ドキドキ) 「好きも何も、僕たち魔法使いは姿形をいくらでも変えられるから美醜に興味はないんだ」  キースの言葉に、私の中の色々なものが崩れ去っていく気がした。  (私の価値って美しさ以外何があるの?)  昔から見た目ばかり褒められてきた。  私よりも才能があったり、商売で成功しているような優秀な子はいる。  私は自分に見た目しか取り柄がないと知っている。  魔法使いであるキースは見た目に興味がないという。 (彼が私に口づけしてくれたのは、同情だ⋯⋯) 「そうなんだ、じゃあ、キースを好きな子はオシャレしても意味ないね⋯⋯それより、キースは私がどうして魔法が使えるか知っていたりする?」  私はどうしたら私のような見た目だけの女が彼から思われるかを考えた。 (私が魔女の血を引いてたら、彼と繋がりが深いってことだよね)  「君の魔力は、国王陛下から君に分けられたものだ。カリナが君に治癒の魔力を分けたのと一緒だ」  キースの言葉に私はスグラ王国時代、レオと一度ダンスを踊ったことを思い出した。  その時に体に熱い何かが流れ込んでくる不思議な感覚があった。  私が魔女として迫害を受けたのも、レオの仕業だったと言うことだ。  私はとんでもない男に自分の体を捧げていた。 (こんな私、キースは軽蔑しているかな⋯⋯)   「私ね、いつも赤い炎が出てたのに、処刑前だけ黒い炎が出たの。それは、なぜだかかわかる?」  私は、震える声を振り絞りながら尋ねた。 「黒い炎は国王陛下が出したものだよ⋯⋯」  私から目を逸らしながらキースが言った言葉に、私は怒りと悲しみで気が狂いそうになった。  私が処刑される直前に黒い炎が出て、騒ぎになったのを沈静化し私のメシアのように現れたのがレオだった。  しかし、その黒い炎さえ彼の演出だったと言うことだ。 「本当に、レオって酷いね。キース、反逆を考えているんでしょ。早いとこ潰しちゃおうよ」  ただ、レオから逃げたいと思ってたのに、今では彼が憎らしい。  勝手に私に執着して、私の尊厳を踏み躙り私をモノにした男⋯⋯。 「ルカリエ⋯⋯ごめん、やっぱり話すべきじゃなかった⋯⋯」  私を抱きしめてくれる、キースは死人のように冷たい。  人間ではなくて魔法使いだからだろうか。  キースは、私のことを気遣い真実を今まで明かさないてくれた。  体は冷たくても、温かい心を持った人だ。 (やっぱり、キースが好き。魔法が上手くなれば、役に立つ存在として側にいられるかな?)  「モリアがね⋯⋯拷問を受けてるらしいの⋯⋯助けられないかな?」  私はキースに抱きしめられながら、きっと今苦しんでいるだろうモリアに想いを馳せていた。  彼女もレオの自分勝手な私への執着愛の犠牲者だ。   「できないこともないけれど、モリアはカリナの双子の姉だ。カリナは親に捨てられていてモリアの存在を知らない。双子の片割れだけが親に大切に育てられたなんて事を知って欲しくない」 「じゃあ、カリナにバレないようにモリアを助けてあげて⋯⋯」  私はここに来て、キースはみんなの気持ちを思いやる人だと気がついた。  私のことを心配してくれていたから、自分が特別なように感じていた。  だけれども、彼はカリナのことも同じように心配している。 (私が特別なわけじゃなかった⋯⋯両想いかもなんて思い上がってて恥ずかしい⋯⋯) ♢♢♢ 「今日から一緒に暮らすことになったみたい。宜しくね、カリナ!」  私はキースに案内されて、カリナの部屋に来た。    魔法学校は基本2名1組で1つの部屋に住むらしい。  カリナがちょうど今2人部屋を1人で使っているということで私は彼女と同室になることになった。 「本当に? すごく嬉しい。いっぱい話そーね」  カリナが私に抱きつきながら伝えてきた言葉に、嬉しさで胸がいっぱいになった。  私は貴族の令嬢とお茶をする際は気を遣っていた。  それはお互い様で、相手側も私と会って話すのを楽しみにしているようには見えなかった。 「うん。私たち両想いだもんね」  私はカリナを抱きしめ返しながら想いを伝えた。  どうでも良い興味もない人間との交流は、空虚な時間だった。  しかし、今、私は初めての女の子の友達で力を分けてくれたカリナと暮らせるらしい。 「両想いって⋯⋯確かに」  カリナは爆笑しながら、キースに頭を下げた。 「じゃあ、カリナ。先輩としてルカリエを宜しくな」  そう、一言言うとキースは去っていってしまった。 (寂しい⋯⋯キースの声が今日はもう聞けないんだ⋯⋯)
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