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25.ずっと一緒にいようね。
「マサス国王陛下が身罷られました。私、ルカリエ・マサスは国王陛下の代理としてここに宣言します。これより、マサス王国は王政を廃止し共和制へと移行します」
私はスグラ王国一向を追い返すと、早速、国民へ向けて演説をした。
低く太く威厳を感じさせる声を出す訓練は、スグラ王国の妃教育で身につけたものだ。
でも、この声を使うのもこれで最後だ。
この国は、身分制度のない全ての人が平等な国にする。
合図を送って地上に出てきた、魔法使いたちが驚きの顔で私を見ている。
カリナ以外誰も私が王妃だとは知らなかったからだ。
しかし、王妃でいるのもこれでお終いだ。
「国の代表は選挙で選ぶこととなります。全てのことは相談し決めていきます。マサス王国は氷の大地ですが、その住みにくい大地を住みやすものにする為に私たちは魔法研究をしてきました。国の為、影ながら努力し続けてくれた、魔法使いたちの成果を見てください」
私の隣にいるキースが魔法の力で氷を溶かし、草を生やし一面の大地を緑にした。
魔法学校で学んだ子達が、その植物を成長させる。
一斉に拍手が巻き起こる。
「マサス王国は魔法を使って、これからより良い国作りをします」
演説が終わると、魔法学校のみんなに囲まれた。
「ルカって王妃だったの?」
「そうだけど、私はもう王妃じゃないよ」
「ルカちゃん、あんな男みたいな野太い声が出すんだね」
マリオの空気の読めない質問に癒される。
「そうだよ。私の一部だけ知って、全てを知った気分にならないでね」
私は色々な自分を持っている。
本当は自然体の私だけでいたい。
「これから、みんな魔法省の職員になるんだからね」
この国の根幹をつくる魔法省の人間の待遇は手厚い。
今まで窮屈な思いをしてきた彼らが、思う存分自分の人生を過ごせるようにしたい
「カリナ! 最近お金も送ってこないから心配してたよ」
近づいてきたピンク髪の2人は、カリナの両親だろう。
彼らはカリナを捨てて金づるにしてたのに、彼女に擦り寄ってきている。
「はあ、どなた様ですか? 世界には7人のそっくりさんがいるらしいので、急に似ているだけで知り合いみたいに擦り寄ってこられると困ります」
カリナは冷ややかな目を2人に向けた。
「全く産んでやった恩も忘れて!」
突然叫んでカリナに詰め寄った彼らにも彼女は冷静だった。
「産んで捨てて貰った恩を、カリナさんも感じていると思いますよ」
彼女の言葉に両親らきし人は逃げるように去っていった。
「カリナ⋯⋯」
私は彼女が心配になり、近づいて抱きしめた。
「ルカ⋯⋯頑張ったね。でも、今、抱きつきたいのは私じゃないんじゃない?」
私はキースに抱きつきたい。
そんなことは毎日のように私、のキースへの思いを聞かされてきたカリナには分かっているのだろう。
「私、玉砕覚悟でまた告白してくるね」
自由になりたい、好きな人と一緒にいたい。
そんな夢を全て叶えることができるのだろうか。
「キース! 本当に好きなの。一緒にいたいの」
「僕は君とは違う種族だし、君よりだいぶ年上だよ」
「それって、好きということと関係ある?」
「ふふっ、ないかもね。美しいとか醜いとかも好きということと関係ないと思うよ」
私はキースの言葉に一瞬心臓が止まった。
私は美しいしか取り柄がない自分は、彼に愛されないとずっと思っていた。
(私が悩んでいたことを彼も知っているの?)
「もしかして、キースは本当に心が読めるの?」
「そうだよ。そして心が読める僕は君が顔だけじゃない凄い女の子だと、ここにいるみんなが思っているって知っている」
みんなが私を微笑みながら見つめてくれる。
誰が何を考えているかなんて、正確にはわからない。
「キース、私の心が本当に読めるなら、私があなたのこと大好きだって知ってるよね」
私の言葉にキースが微笑みながら頷く。
彼はいくら私が自分を偽っても、本当の私を知ってくれる人だ。
「心が読めるなら、わざわざ言う必要ないかもしれないけど言わせてもらうよ。私はキースが世界一大好き! ずっと一緒にいたい」
私の言葉に驚きもしないキースはきっと本当に心が読めそうだ。
「僕もルカリエが好きだよ。ずっと一緒にいようね」
私は今まで生きてきた中で一番好きな人から一番嬉しい言葉を貰った。
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