7.僕を誘惑しようとしてましたよね。

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7.僕を誘惑しようとしてましたよね。

 私は地下に建設されている魔法学校へと案内された。 「国王陛下からお話は伺っております。魔法学校の校長をしております。キースです」 「ルカリエ・マサスです。本日から宜しくお願いします致しますわ」  藍色の髪に青い瞳をした青年は私と同じ年くらいに見えた。 苗字がないところを見ると平民だと言うことだ。 「王妃殿下のご想像通り、私は平民でございますよ。さあ、こちらへどうぞ」 私の手を取ると、彼は私を案内しようとした。 「待って! その前にあなたと2人きりで話したいわ」  私の護衛の騎士たちが困った顔をしている。 「王妃命令よ、護衛の騎士は皆出口で待ちなさい」 昨日、手に入れたばかりの王妃という権力を使った。 (この権力だって、いつ失うか分からないわ⋯⋯)  私の目的は魔法の力をつけて、いつでも逃げ出せる力をつける事だ。 レオの心変わりで、クリスの時のように何もしてないのに処刑まで追い込まれるのは絶対避けたい。  護衛騎士たちは、一礼すると魔法学校の出口の方へ下がった。 「王妃殿下、何を考えているのですか? 僕があなたを害する可能性もあるのですよ」 「どうやら、あなたの魔法って心を読めるわけじゃないみたいね。あなたは私の敵なの? 興味ないふりをしても、一瞬私に見惚れてたでしょう」 先程まで涼しい顔をしていた、キースが一瞬目が泳いだのが見えた。  私は強くなることにした。  今、自分にあるものは全て利用するのだ。  王妃の権力、類稀なる美貌⋯⋯どちらも今の私にはあるが、明日の私にはないかもしれない。 「キース、早く2人きりになれるところでお話ししましょう」 私は彼の藍色の髪に指を通した。 「分かりました」 キースが私を案内したのは校長室だった。 (寝室に案内されたら、どうしようかと思った⋯⋯)  校長室には大きな机と、客人を待たせる為のソファーがあった。  私はそのソファーに座り、彼も隣に座るように促した。  壁に刻印された魔法学校の紋章は、大陸に魔法の杖が突き刺さったような絵柄だった。  私はそれを見て、この魔法学校の建設目的が分かってしまった。 「もしかして、魔法を武力として使って戦争を起こすつもり?」 私の言葉に、一瞬キースはにっこり笑ったかと思うとソファーに押し倒してきた。 「ちょっと何? 私は王妃よ! こんなことしてタダで済むと思っているの?」 「さあ、どうなるか教えてくれますか? ルカリエ王妃殿下⋯⋯僕を誘惑しようとしてましたよね。早く続きをしてください」  私の髪を掬ってそこに口づけするキースは、私を侮り過ぎていないだろうか。 でも、もしここで彼に何かされてしまっては今の平穏な日々を失ってしまう。 私の頭の中にクリスの寵愛を失って投獄されてからのスグラ王国の地獄の日々がリフレインした。 「何もしませんよ。泣かないでください⋯⋯」 キースは私を抱き起こして頭を撫でてきた。 「怖くて⋯⋯仕方がないんです。いつまた平穏な毎日を失うのかが⋯⋯だから、私、力が欲しいの。いつでも、レオから逃げられる力が」 私の言葉にキースが驚いているのが分かる。  動揺し過ぎて、初対面の人相手に本音を言い過ぎてしまった。  王妃が国王である夫から逃げる為の力が欲しいだなんて、とんでもない話だ。
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